君、実業って知ってるか? 執筆:夏目 俊希
こんにちは!
いいトコ探しで、仕事をやりたいことに変える「イイトコブランディングの夏目」です。
前回のお約束である私のことについてお話します。
遡れば、30年近く前、私が就職活動をしていた頃の話です。
今となっては、歴史上の出来事となっているバブル真っ只中の頃のこと。
今ではありえないでしょうが、超売り手市場で、よほど高望みをしなければ、いくつも内定がもらえる、そんな頃でした。
さて御多分に漏れず、私も就職活動をしていました。
ただ他の学生と明らかに違うことがありました。
その目指す職種です。
まず絶対に嫌だと思っていたのは、営業職。
なぜなら、人に頭を下げなくてはいけないから。
とんでもないですよね。
続けます。
だから、人に頭を下げなくてもいい仕事、もっと言えば、人から頭を下げてもらう仕事がいいと。
すいません、バブルだったもので。
とにかくとんでもない動機で選んだ仕事が、経営コンサルタント。
なぜなら、企業のお偉いさんたちが、頭を下げて頼んでくるのがコンサルタントだと思ったから。
どこまでも尖がりまくっていました。
かと言って、当時は、今と違って大学に来ている求人票には経営コンサルタントなんてそうそうあるわけでもなく、さてどうしたものかと。
私がとった行動は、当時のイエローページ、職業別電話帳ですね、これに載っている経営コンサルタントの項目にあって、(代)となっている電話番号に片っ端から電話を掛けるというものです。(代)じゃない電話番号は個人事務所でさすがに個人のところは募集しないだろうと思ってのことです。
察しの良い方ならピンとくるかと思いますが、それって、電話での飛び込み営業じゃないの。まさにそうなんです。
私は、営業なんて大嫌いだと言っておきながら、自らを売り込むために、まさに営業をしまくっていたのです。
その成果は?
200件ほど掛け、10社ほどの会社の方と実際にアポを取り付け、お会いし、5社の内定を取り付けました。
営業の成果としては悪くないですよね。
電話で話す際にも、
「御社は新卒の採用をされてらっしゃいますでしょうか?」と切り出し、
「うちは中途採用だけだから」と言うことでしたら、
素直に引き下がります。
でも「今までは中途採用しかしてこなかった。けどね…」と含みを帯びた答えをしてきたらしめたもの。
「でしたら、テストケースとして、一度お会いいただけませんでしょうか?」と切り出し、アポに漕ぎ着けた先も数社ありました。
実際に会ってもらった際にも、200件も売り込み電話をしていましたので、まさに立て板に水、自己PRはお手のものでした。
そんな感じでしたので、ある幹部の方は、「うちの最年少は28歳だから、そんなに違わないよね。そろそろ新卒を採ろうと思っていたので、よかったら、うちに来ないか」なんて誘われてました。
そんな感じでの5社内定です。
有頂天でしたね。
どこにしようか決めかねているそんな贅沢な頃に、実は、運命の出会いをしました。
書店で経営者向けの雑誌を立ち読みしていたのですが、あるCI(コーポレイトアイデンティティ:企業デザイン)専門のコンサルティング会社の日本支社長のインタビュー記事が目に留まりました。
「そうか、この会社もコンサルタントの会社じゃないか。よしアポをとろう」ということで、いつものように電話番号を知らべ、いつものように掛けてみました。
たぶん、お昼頃だったかと思います。
受付の方が席をはずしていたのでしょう。
私の電話にあろうことか社長自らが出たのです。あの記事でインタビューを受けていた社長が電話口にいる。
ちょと緊張したのですが、それは慣れたもの。いつものように採用のニーズを確認しました。
社長は、「うちはデザイン系の会社だから、専門家を中途で採ってるくらいだね」と丁寧な感じで断りの方向に話を進めていきました。
「でも君、面白そうだから来なさい。話を聞いてあげるから」とのこと。
まあ、脈はないだろうけど、話を聞いてくれるというんだから行こうかなと軽い気持ちでアポを取り付けました。
さて、当日、受付で社長へのアポがある旨を伝えると、「えっ」という表情とともに「なんで学生が社長にアポ?」とでも言いたげに社長に確認を入れてました。
「失礼しました。こちらへどうぞ」
確認が取れたのか、社長室に案内されました。
目の前の社長は、にこやかに出迎えてくれました。
でもいきなりこう切り出されました。
「昨今は、新卒を採ってコンサルタントにという会社も増えてきたけれど、俺は反対だね」
(そう言われても、もうコンサルタントになることに決めたんだけど)
私としては、めんどうくさいなあという思いと共に、なぜそこまで言い切るのかという興味も沸いていました。
「君、実業って知ってるか?」
「えっ、実業ですか?よく分かりません」
「だろ、だからダメなんだよ」
「実業とは、物を売って金を稼ぐことだよ」
「実業も知らない人がどうしてコンサルタントができるの?」
いやー、まさに頭をガツンとやられましたね。
確かに私は実業のことを知らなかったですし、当然、経験もありません。
「経営者は日々、このことに頭を悩ませているんだよ。それを頭でっかちに知識を振りかざしてやってきても聞く耳を持たないよ。わかるだろ?」
尖がりまくっていた私でしたが、やたらと腑に落ちたのを覚えてます。
「でも、やっぱりコンサルタントになりたいと思っています」
「どうすれば、その実業を経験できるんですか?」
やたらと素直な私がその時の気持ちを正直に社長にぶつけていました。
「営業だよ」
(営業? 営業がしたくなくて、人に頭を下げたくなくてコンサルタントになろうとしていた私に営業?)
でもとっさに出た言葉は、
「分かりました。営業やります」
「でもやっぱりできるだけ早くコンサルタントになりたいです。社長がおっしゃる実業を経験したのちにコンサルタントになろうと思いました」
「なので、なるべく早く実業を理解できるのはどんな営業なのか教えてください!」
どこまでも前向きというか、都合がいいのか、手っ取り早く営業を経験して、さっさと見切りをつけて、本来の希望通りコンサルタントになろうと、そんな甘い考えをぶつけてしまいました。
でも社長は答えてくれました。
「そうだな、医者に薬を売るなんてのは大変だろうから、薬の営業なんかいいんじゃないか?」
「分かりました。薬売ります!」
薬学部を出たわけでもなければ、もちろん、どれだけ知識が必要なのかもまったく知らないのに、この時を境に私は薬の営業に突き進んでいくことになるのです。
その後、どれだけ薬の営業が大変なのか思い知らされるわけですが、まだこの時は、できるだけ早く実業を経験してコンサルタントになる、それしか考えてませんでした。
時はバブル。
製薬メーカーも新卒採用を増やしていたこともあり、薬学生でなくても門戸を開いていました。
例によって、電話でのアポもお手の物。さっさと面接の約束を取り付け、あっという間に内定をゲットしました。
ただ営業で最も重要なことの一つである顧客ニーズを把握する、これをまったく意識していなかった私は、自分自身の売り込み先である会社のことも業界のことも何も知らないまま、ただ売り込むことばかりに終始していました。
内定、つまり、商品である私を買ってもらうことはできたんですが…。
社長の貴重なアドバイスを都合よく解釈したのちに、運よく薬の営業マンになるのですが、当初の目論見であるさっさと営業から足を洗ってコンサルタントになれたのか、はたまた転落していくのか。
その後に関しては、また改めてお伝えしたいと思います。
記事はお役にたてましたか?
記事にご興味をもっていただけましたら、
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓以下のソーシャルボタンで共有していただくと嬉しいです^^