「深い苦手」は、ほぐすことで突破しょう  執筆:矢場田 勲
「会話が苦手なんです」
カウンセリングをしていると
クライアントからこういった話題が出てきます。
他にも
パソコンが苦手、早起きが苦手、料理が苦手、電話が苦手、
いろんな苦手があります。
こういう苦手は誰にでもあるものです。
でも、深い生きづらさを感じ続けるほどの苦手になっていると、
日常生活が正常に進まなくなる人もいます。
苦手を克服しようと頑張るけど、
楽になるどころか、余計にしんどくなってしまうのです。
カウンセリングでは、
苦手が拡大してしまって、
自分ではどうすることもできなくなっているケースが多いです。
こういう場合、苦手を1本の糸だと思ってみましょう。
「会話が苦手」という1本の糸。
よく観察すると、1本だと思っていた糸は、
複数の糸だということに気づきます。
会話が苦手という糸をていねいに観察すると、、、
・話を聞くのが苦手
・しゃべるのが苦手
・大勢でしゃべるのが苦手
・ある特定の人としゃべるのが苦手
・相手の反応が気になって疲れる
・そもそも人が怖い
・方言コンプレックスがある
・相手の目が見れない
・人間関係のトラウマがある
こんなふうに複数の苦手の糸があるのがわかってきます。
そして複数の糸が複雑に絡み合っている状態です。
2,3本の糸であれば自分でスグに対応策が考えられそうですが
10本もの糸が絡み合うと、人はもうどうしていいかわからなくなります。
糸を1本緩めたとしても、今度は別の糸が余計にきつく結ばれる。
そんなことが起こってくるので、
はたして良い方向に進んでいるのか、悪い方向に進んでいるのか、
自分ではわからなくなってしまうのです。
私が小学生の頃、父親と釣りに行った時の話です。
釣りを楽しんでいると、ふいに釣り糸が絡むんです。
餌がオモリと絡んでしまったり、
父の釣り糸と絡んでしまったり。。。
もうそれだけで頭が混乱して、
思いっきり糸を引っ張ってしまい、余計にがんじがらめになってしまう。
ところが、父親は粘り強く糸をほぐして、
ものの数分で、見事に絡みをほどいてくれるんです。
当時は、視野が異常に狭くて、
糸の絡みの全体像が全く見えてなかったんです。
絡んでいる1カ所か2カ所くらいしか意識できなかった。
視野を広げてじっくり観察していたら、
意外と簡単にほぐせるものだったのです。
カウンセラーは、相手の言葉を伝え返すということをします。
クライアントは、自分で話したこと、
カウンセラーが伝え返したこと、
同じことを2度聞くことになります。
これだけでも、少し客観的に苦手を観察できるようになります。
今まで見えなかった糸が見えるようになってくるのです。
あ、自分はこういう部分が苦手なんだ。
この部分は苦手ではないんだな。
これは今からでも対応できそうだ。
ここは自分が頑張ってもどうしようもない部分なので、
放っておこう。
こんなふうに問題点が明確になるだけでも
人はホッと安心できるようになります。
安心感が芽生えてくると、
少しずつ自分と向き合えるようになってきます。
そうすると、じわじわと希望の未来像が見えてきます。
逆に、カウンセラーが伝え返すことをしないで
いきなりアドバイスをすると、
クライアントは混乱することがあります。
すでに複雑に絡み合っている糸があり、
身動きがとれていないのに
さらにもう1本糸が絡んでくるようなものです。
混乱状態ではアドバイス通り行動できないことが多く、
行動できない自分に対して劣等感を抱くようになり、
さらなる苦手意識が追加される可能性があります。
ただし相手との信頼関係が築けていたり、
アドバイスを求めてきているときは、別になります。
いかがでしょうか?
「苦手」なものがあって、
何から手をつけていいかわからない状態になったとき、
まずは、複数の糸が絡み合っている状態なんだと気づくこと。
全体を見ながらほぐしていくことで、
これは考えても無駄だったなとスルーするものも見つかるし、
これはちょっと意識するだけで解消できそうだ、
というものも見つかります。
そうすることで突破口の糸口をつかむことができますよ。
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